漢方薬局経営
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漢方薬局開業日記その11〜上海中医薬大学本校編③臨床研修編〜
上海編もいよいよ終盤。
今回の内容は上海中医薬大学の臨床研修について。
本場の中医大学へ留学する時、もっともこの研修を期待して留学される方が多いのではないかと思われるので、詳しく説明していきたいと思う。
臨床研修の各科
前回のブログでも少し説明していたが、上海中医薬大学留学の場合、病院での臨床研修が始まるのは大体10月半ばくらいからである。
それまでにも週に数回の研修はあるが、留学期間の残り3ヶ月弱になると、もう講義もほとんどなく、朝から夕方まで病院でということになる。
私が回った科としては「中医内科」、「中医婦人科」、「中医乳腺科」、「中医神経科」、「中医皮膚科」、「中医鍼灸科」などだった。
「中医内科」「中医婦人科」は間違いなく毎年開かれていると思うが、その他の科は各年の先生の状況によって変わるかもしれない。
中医婦人科の張停停先生
ちなみに「中医乳腺科」(名前が正確でないかもしれません)というのは、主に乳癌術後の再発予防や、乳腺炎、お乳の出が悪い、など日本の乳腺外来の中医版と思ってもらえたらよい。
「中医神経科」というのは主に運動器疾患の問題を抱えた方がこられる科で、パーキンソン病やALS、脊髄小脳変成症など比較的難病の方が多い科である。
その他の科は「中医」がついているだけで日本の診療科とほとんど変わりないと思っていただいて結構である。
どの科も基本的には四診中心
ちなみに一般的な中医の診察の仕方をご存知であろうか?
少し違う点もあると思うが基本的には日本でかかる「内科」と同じような感じと思っていただければ良い。
その時はもちろん検査機器などを使うのではなく中医学の「四診」を用いて診断を行うのだが、最近の先生は西洋医学の病院の検査数値なども参考に処方を組み立てる、いわゆる「中西医結合」が大半である。
四診に関しては以下のブログも参考にしていただきたい。
●望診について
https://www.irodori-kanpou.com/irodorikanpoublog/20181218/1743/
臨床研修の内容
研修の内容は先生によってかなり異なる。
全員の症状を細かく説明してくれる先生の研修はとても意味のある研修なのだが、残念ながら一日数人のみ説明があるだけで他はずーっと聞いているだけになる先生もいる。
これにはいくつかの理由があるのだが、1つは患者数の問題がある。
患者数の多い先生の場合
向こうの病院では、受付時に希望する先生を自分で選択できるので、当然教授や有名な先生には多くの患者がつく。
私の受けた研修の中で1番多い先生は、半日で約50人〜60人くらいの患者を診ていた。
当然病室は患者で満室、そして騒がしい(笑)。
私が中国の病院で受けた衝撃の1つとして、この病室の状況はかなり強烈であった。
日本の場合、病室には医師と患者、それに看護師だけというのが普通だと思うが、中国では全く異なる。
診察中も他の患者が部屋を自由に出入りするのはもちろん、診察中の患者をその他の患者が取り囲んで一緒に医師の話を聞いていることも多々ある、というかこれが普通の病室の状況なのだ。
もちろん個人情報などおかまいなしの超オープンな病室なのである。
TwitterやFacebookすらつかえない情報制限の厳しい国とはとても思えないようなありさまだ(笑)。
まあそれだからこそ学生の我々も自由に診察を見学できるわけであまり批判はできないのだが。
ちなみに向こうの患者は頼めばほとんどの方が舌診・脈診をさせてもらえるので必ず頼んでみることをお勧めする。
こういう状況の先生は、当然我々学生に一人一人の説明をしている時間もないので、いわゆる典型的ではなく基本と全く違う症例や、特殊な生薬の選択をするときなど、普通ではない患者を数人だけ選んで説明する、という形式になってしまうのだ。
そのため、実際に詳しい説明を聞けるのはだいたい平均すると半日で2〜3人程度だった。
患者数の少ない(制限している)先生の場合
一方で、有名な先生でも「1日20人しか受付をしない」という先生もいる。
そのような先生の場合は一人ひとりの患者の状況についてかなり詳しく説明を聞くことが出来るし、先ほどの舌診や脈診についても先生の考え方を交えて説明してくれるので、かなり有意義な研修を受けることが出来る。
一番の問題は語学力
また我々を担当してくれる先生は、ほとんどが日本への留学経験のある先生なので、先生の話すことについてはほとんど問題ないのだが、患者は違う。
もちろん日本語など話せるわけもないし、当然話す気もない。
さらに上海には「上海語」という非常になまりの強い方言がある。
日本の標準語と大阪弁の違いというレベルではなく、例えるなら琉球やアイヌ語レベル、というか上海人以外は中国人でもわからないというのだから殆ど外国語といっていいくらいの違いのレベルだ。
若者はいわゆる普通の中国語「普通話」を話してくれるが、お年寄りの方はほとんどが「上海語」を話す。
当然留学1年程度ではさっぱり聞き取れない。
よって説明の少ない先生の場合は、先生の教え子達の記入するカルテを見て、それを参考に自分でその患者がどのような証だったかを推測しなければいけないため、非常に効率が悪く、そして大変である。
もし、中医薬大に留学を考えられている方は、留学前に少なくとも半年〜1年は中国語の勉強(特にリスニング)をしてから留学することをおすすめしたい。
中国留学でトラブルは必須!?
また、中国では時には信じられないようなことが起こることもある。
最もタチが悪かったのは「休診の日」が我々に伝えらておらず、病院まで朝早くに1時間もかけて行ったにもかかわらずまさかの「休診」でとんぼ返りということが1度ならず2度もあったことだ。(ちなみにこれは2回とも同じ先生)
当然事務局の方にも文句を言って、一応は代替えの講座を用意してくれはしたが、昨年の留学生の方にもよくよく聞いてみると毎年同じことが繰り返し起きていたとのことだった。
毎年同じように文句を言っているにも関わらずの再発。
これは国民性の問題なのか、その教授の人間性なのか、学校側の力の入れようの問題なのかは正直なところ分からない。
ひょっとしたら上海以外はきちんとされているのかもしれないが、とにかくまあビックリである。(苦笑)
処方箋もそのままくれる(笑)
他に日本ではあり得ないこととして、患者の処方箋を数部発行してもらい、我々生徒ももらえたりした。
①は長く続く咳、④は子宮筋腫疑い
名前なども全く隠さずそのままのものだ(笑)
私の家には今でもいただいた処方箋が、病状の詳細を書いたノート数冊とともに何百枚とある。
もちろんそれを我々が使ってどうこうするということはない(ていうかできない!)のだが、個人情報もへったくれもない。
このへんも文化というか習慣の違いなのか、う〜ん・・・、もう「さすが中国!」としかいいようがない(苦笑)
まとめ
今日はいろいろ文句や変わったことも書いたが、ほとんどの「臨床研修」はきちんとした内容なのでご心配なく。
先生と仲良くなれば、その病院独自の処方内容や、先生独自の生薬の選び方など、日本で聞けないような話をいっぱい聞くことが出来る。
婦人科の処方内容などは今後のブログでも紹介して行くつもりなので期待して待っていてください。
子宮内膜症の処方
子宮筋腫の処方
黄体期(高温期)の処方
排卵期処方
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