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卵管閉塞が原因の不妊症が漢方薬で改善した症例

2018-12-17

ご存知のかたも多いかと思いますが、不妊症の原因は、排卵因子、卵管因子、子宮因子、男性因子、その他、と非常に多岐にわたっています。

今回説明する症例は”卵管閉塞”という卵管因子が原因の不妊症の方が、漢方薬を飲んで、無事、妊娠出産された症例です。

卵管閉塞による不妊症の多くは、西洋医学においてはやはり体外受精の適応となることが多いですが、漢方・中医学による治療を単独、もしくは西洋医学との併用で行うことで、より改善が期待できます。

卵管閉塞による不妊症の西洋医学的治療は?

現在、卵管因子が原因の不妊症の治療は、卵管の閉塞の程度にもよりますが、軽度の場合は卵管形成術という手術による治療法が選択されることが多いです。

しかしながら、手術の適応と成るには、ある程度の長さの卵管が残っていて、なおかつ機能的な障害が少ないことが必要条件となります。

そして、もし高度に卵管閉塞が進んでいる場合には体外受精・胚移植(IVF-ET)の適応となる場合がほとんどです。

漢方・中医学における卵管閉塞による不妊症の治療例

一方、漢方・中医学では卵管閉塞による不妊に対してどのような対応をするのでしょうか?

今回は、上海の婦人科で非常に有名な老中医である”蔡小荪”の医案から一例ご紹介したいと思います。

《33歳女性の卵管閉塞による不妊症の治療》

2003年1月7日初診

不妊治療歴は7年。2002年秋に病院にて卵管造影を行ったところ、両方の卵管采周囲に癒着あり。恐らく骨盤内の炎症が原因とのこと。

【月経】:15歳で初潮、出血期間は4〜7日、月経周期は28〜30日と正常で、月経時に少し腹痛があり。月経前に胸の張りや頭痛がある。

【帯下】:帯下(オリモノ)の量は普通で色も問題なし。

【男性因子】:精液検査異常なし。

【弁証(診断)】:肝腎陰虚、湿熱瘀滞、包絡受阻。

【治療】
:月経期は四物湯加敗醤草、王不留行、路路通で理気調経し少しの清熱を加える。

:月経後は通絡方加減(茯苓・生地黄・懐牛膝・路路通・穿山甲・公丁香・仙霊脾・石楠葉・黄精・桂枝・王不留行・地竜・皂角刺・敗醤草・牡丹皮・赤芍など)で清化湿熱・行瘀導滞・育腎通絡する。

:続けて益腎培元方加減(茯苓・生地黄・熟地黄・山茱萸・仙茅・仙霊脾・鹿角霜・女貞子・紫石英・巴戟天・麦門冬)に白芍・柴胡を加えて疏肝育腎培元する。

【経過】:これによって月経周期を8ヶ月ほど調えたところ、妊娠陽性となった。そして1年後に健康な女の子を出産した。

”蔡小荪”老師の考え方

蔡老師によると、卵管閉塞が形成される主要な原因は、湿熱瘀血によって卵管が閉塞され不通となるからである、としています。

よって治療は、活血理気清熱化湿を合わせ、同時に補腎することで卵管の機能回復をすることがまさにキーポイントとなってきます。

また特徴として、以下のように月経周期をに3つに分けた治療を主張しています。

  1. ●月経期の治療は四物湯の加減を用いる
  2. ●月経後の3〜7日間は”通絡方”の加減を用いて治療する
  3. ●月経周期の中期と後半は、清熱活血通絡ではなく益腎温煦を主とし、暖宮撮精して妊娠を助ける益腎培元方の加減を用いる。

つまり3期を通して、活血清熱理気通絡することが、卵管閉塞による不妊症に対する治療の大法としているのです。

彩り漢方薬局による解説

西洋医学的に見た場合、卵管閉塞の起こる原因の多くは、生まれつきの奇形などを除くと、クラミジアなどの細菌感染からの炎症が原因となっていることが多いと考えられています。

これを漢方・中医学的に解釈すれば、”性感染症(湿熱)が原因で卵管が癒着をおこして詰まってしまい(瘀血阻滞)、卵管で精子と卵子が出会えない状態(包絡閉阻不通)になっている”となります。

また、33歳と年齢は若いですが、不妊治療歴が7年と長いため、ホルモン剤などの影響で”腎虚”が促進されている可能性はやはり考えないといけません。

そのために腎の働きを助ける”補腎剤”も併用されています。

また蔡先生の特徴として、周期を月経期・低温期・高温期の3期に分けて方剤を使い分ける、周期療法を取り入れています

それぞれの特徴は以下のとおりです。

  1. 月経期は四物湯で血を補いながら、敗醤草、王不留行、路路通で清熱通絡している。
  2. 低温期は、基本的に妊娠することはないので、排卵期までの間しっかりと強力な活血通絡剤を使用して骨盤内の汚れ(湿熱・瘀血)を掃除している。
  3. 高温期は受精(妊娠)している可能性があるため、強力な活血通絡の薬は使用せず、補腎を中心に処方を組んでいる。

もし、この治療を日本で行う場合、蔡先生のように生薬の煎じ薬ですべて処方を組むというのはかなり困難です。

しかしながら、卵管閉塞による不妊の原因を”瘀血”と”湿熱”、そしてそこに”腎虚”が絡んでいると考えれば、日本にある漢方薬や健康食品でも十分に代用ができます。

例えば

  • ●”瘀血”には水蛭(スイテツ)シャ虫(シャチュウ)といった動物性の強力な活血剤や、莪朮(ガジュツ)・三稜(サンリョウ)などの植物性の活血破血剤をもつ方剤があるのでそれを使う。
  • ●”湿熱”には土大黄(ツチダイオウ)山梔子(サンシシ)などの方剤を用いる。
  • ●”補腎”には鹿茸(ロクジョウ)亀板(キバン)紫河車(シカシャ)などの補腎剤の含まれている方剤を使う。

このように、病気の原因となる”病機”とその原因に対する治療法”(治法)”を考えることができれば、十分に対応は可能と考えております。

まとめ

卵管閉塞が原因となった不妊症は、西洋医学においては多くのケースで体外受精の適応となっていることが多いかと思います。

一方で、漢方・中医学の場合は”湿熱”や”瘀血阻滞”などによって起こっていると考えられますので、それぞれに対応する漢方薬を使うことで改善が可能な場合も十分にあると考えます。

もちろん、これら以外の原因がさらに絡んできている症例もあるかと思いますので、漢方薬の服用を希望される場合は十分な説明を受けてから服用するようにしてください。

以上、長文ですが参考となれば幸いです。

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