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帯状疱疹に対する漢方治療① 〜朱仁康臨床経験集より〜
前回お伝えしていたように、今回から皮膚疾患に関する漢方・中医学の症例を解説していきたいと思います。
初めの疾患は「帯状疱疹」における漢方治療について。
何から始めようかと悩んでいたところ、先日、友人がちょうどヘルペスになったと言うことからとりあえず始めはこのテーマに決めました(笑)
帯状疱疹は水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスは単純ヘルペスウイルスの感染によって起こります。
2つのウイルスはとても似ていますが、症状としては帯状疱疹のほうが悪化しやすく、ひどい場合は後遺症が残ることもあるため早めの治療が必要になります。
帯状疱疹に対する西洋医学的な治療は?
ちなみにこの友人は病院で抗ウイルス剤を処方され、現在は症状は治まっています。
多くの場合は早期の抗ウイルス薬の内服投与で治まりますが、重症例では入院し点滴治療ということもあります。
このように、一般的には帯状疱疹に対してはほぼ全員「抗ウイルス剤」で治療を行います。
漢方・中医学における帯状疱疹の治療例
一方で漢方や中医学ではどのような治療が行われるのでしょうか?
それでは朱先生の症例を見ていきましょう!!
33歳女性の帯状疱疹の治療例
●初診1958年4月4日。
【主訴】:左腰、及び左太ももに小さい水疱の集合体が出現、激しく痛み出してからはすでに3日ほど経っている。
【現病歴】:7日前、左腰部と左下肢に針で刺したような刺痛が現れ、神経痛を疑ったがそのままにしておいた。すると3日前、左腰部と左大腿外側に大きな紅斑・小さな水疱が出現、刺痛はさらにひどくなり触れるのも怖いくらい。居ても立ってもいられなくなったため痛み止めを飲んだが痛みがまだ治まらない。大便は乾結(便秘)。
【検査】:左側腰部及び左大腿外側(腰椎1〜2番に相当する部位)にそって小さい水疱の集合体が見られ、部分的に血疱になっており、基底部は潮紅している。脈は弦数、舌苔薄黄。
【中医診断】:蛇串瘡
【西医診断】:帯状疱疹
【証属】:心肝二経之火内鬱
【治則】:瀉心肝之火熱
【薬用】:黄連9 黄芩9 焦山梔9 大青葉9 番瀉葉9 金銀花9 連翹9 赤芍9 天花粉9 青黛1.5 水煎
(外用)玉露膏
●第二診:4月6日、2日分服用すると、水疱はかさぶたになり、刺痛も明らかに軽減した。しかしながら大便は3日出ていない。舌苔黄膩、脈弦数、通腑泄熱へ。
生川軍(大黄)6(後下) 黄芩9 山梔子6 大青葉6 連翹9 牡丹皮9 赤芍9 忍冬藤9 ×2
●第三診:4月8日、疱疹部の大半が乾燥し治癒しきており、痛みはほとんど消失した。便秘も改善。前方から大黄を除き、天花粉9gを加えた。さらに2日分服用後完治した。
※参考文献:朱仁康.朱仁康臨床経験集-皮膚外科.人民衛生出版社 2005.
彩り漢方薬局による考察
邪気は”湿熱”
紅斑・水疱という皮膚所見、そして舌色が黄色を呈しているというところから、この帯状疱疹の主要病邪は「湿熱」であろうと推測できる。
発症部位は「脚の外側」というところから、足少陽胆経など足三陽経の部位であることがわかる。
朱先生の診断では肝経となっているが、経絡上は肝経は大腿の内側を通る。
しかし肝と胆は中医学では表裏関係にあり、肝胆はよくまとめられて説明されることも多いため肝火、胆火の違いというのはここではそれほど大きな問題とはなっていないものと思われる。
諸々の痛痒瘡は、皆心に属す
また弁証では「心肝二経之火内鬱」となっているがこの「心」はどこからきたのであろうか?
一つは中医学基礎である五行論から考えると、心と肝は相生関係にある(肝→心)ため肝の熱はよく心に伝わり心肝火旺となる、というところから。
もう一つは《素問・至真要大論》に言う「諸々の痛痒瘡は、皆心に属す」より、皮膚の痛み(痒み)は、ともに心火に関連がある、というところから。
よってここでは肝火だけではなく心火も存在するため「心肝二経之火」となっている。
治療のポイントは清熱燥湿・瀉火解毒
治療は当然心肝の火を冷ますための「清熱瀉火」がメインとなってくるのだが、皮膚所見(水疱)より「湿」に対する治療も必要になるため「清熱」と同時に「燥湿」が必要となる。
さらに西洋医学的な面からにはなるが「抗ウイルス」「抗菌」といった感染との絡みで「清熱解毒」も加えた方が良い。
またこの患者の場合は大便乾燥という陽明腑実(胃・大腸に熱がある状態)の症状もあるため「清熱瀉下」も必要となる。
処方解説
以上のようにして処方を分析していくと
- ●清熱燥湿:黄蓮・黄芩・山梔子
- ●清熱瀉火:花粉・黄蓮
- ●清熱解毒:金銀花・連翹・大青葉・青黛
- ●清熱瀉下:番瀉葉(センナ)
のように分けることができるが、黄蓮・黄芩・山梔子などは清熱燥湿・解毒・瀉火すべての性質をもつため、各生薬とも1つにだけ当てはまるのではないことはご理解いただきたい。
ちなみに清熱剤として日本でも有名な「黄連解毒湯」は黄蓮・黄芩・山梔子に黄柏を加えたもので、今回の症例の場合は「黄連解毒湯」エキス剤も十分適応となる。
ただ、もしエキス剤のみで対応する場合には、「大青葉エキス」や「茵蔯五苓散」を加え、清熱解毒・利水袪湿を高めると効果的と思われる。
ちなみに肝(胆)湿熱といえば「竜胆瀉肝湯」という非常に有名な方剤があるのだが、日本のメーカーの処方(Tムラなど)は原典本来の処方構成から肝経の引経薬であるはずの「柴胡」が除かれている。
また本来は多量の苦寒薬による傷陰血を防ぐために入れられている「当帰」「地黄」が最も量が多い。
よって今回のような急性期には残念ながらあまり適していないように思う。
もし使用するならば「柴胡」の入っている「四逆散」などを併用し、さらに「黄連解毒湯」などで清熱作用を強化すべきであろう。
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