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漢方薬局開業日記その8〜上海中医薬大学日本校〜

2019-02-17

上海中医薬大学日本校で学ぶ

前回は私がなぜ日本漢方ではなく中医学を学んで行こうと決めたのかまでを話させていただいたが、今日はその中医学の勉強の仕方の1つとして『上海中医薬大学』、いわゆる中国の中医薬大学の日本の付属校での勉強について紹介していきたい。

以前にもちらっと書いてあるが、私の宝塚での薬局活動は約二年で終わることになった。

漢方薬局(QOL部門)の経営がヤバいという噂を耳にし、大変なことになる前に転職せざるをえなかったのだ。

しかし、漢方薬局での人員募集というのはとても少なく、あったとしてもとてもではないが暮らしていけるような給料ではなかった。

そこで、とりあえずそこそこの給料のでる調剤薬局に就職を決め、漢方(「中医学」)の勉強は独自にやっていこうということに決めた

独自に勉強するといっても、本を読む意外にどんな方法があるのか全く知らなかったため、一通りネットなどで調べてみたところ、そこでヒットしたのが、いわゆる「中医薬大学の日本校で勉強する」という方法だった。

日本校のある中医薬大学

実はこの「中医薬大学日本校」、みなさんも調べてもらうとわかるが予想以上にたくさんあることに驚かれるのではないかと思う。

  • 「北京中医薬大学」
    「上海中医薬大学」
    「黒竜江省中医薬大学」
    「天津中医薬大学」
    「南京中医薬大学」…

などなど。

このなかで一番歴史が古く、カルキュラムもしっかりしているのは「北京中医薬大学」である。

しかしこの学校があるのは東京

当時私は宝塚から奈良に引っ越したばかりで、さすがに月1とはいえ東京まで通うのは大変なことなので、まずは関西から通える範囲で探し、選んだのは「上海中医薬大学」だった。

理由はずばり「近いから!」

以外は特にない(笑)とりあえずまずは「物は試し」なのだ。

上海中医薬大学日本校における学習内容

「上海中医薬大学」の「学習の内容」を簡単に紹介すると

①添削(レポート提出)による通信教育
②月数回のスクーリングセミナー(主に中医内科学)

の2つに大きく分かれている。

詳しく調べたわけではないので詳細は不明だが、他の中医薬大学もほとんど同じような物だと思われる。

このうち主となるのは①の通信教育、つまり自宅での独自学習である

どのような内容かというと、まずは

「中医医学史」

「中医基礎理論」

「中医診断学」

「中薬学」

「方剤学」

「中医内科学」

「中医婦人科学」

「中医小児科学」

という順番で、各単元ごとに2〜3の課題が与えられ、それを提出し、採点して70点(忘れた)あれば合格というふうな流れで進んでいく。

人によって進むスピードは異なると思うが、大体、約2年かけてこれらを全て終わらせ、全てパスすると「国際中医師試験」という試験を受ける資格がえられる

国際中医師とは?

この「国際中医師」なるものは名称もそうだが少しややこしい。

「中医師」とはなっているが実際は「医師資格」ではないため、もちろん医療行為ができるようになるわけではない

日本で医療行為ができるのは当然ながら医師免許を取得した”医師”である。

つまり、国際中医師免許とは簡単いうと中医学をある程度勉強したという印、証明書のような物(例えばTOEICで満点をとっても英語の先生になれるわけではないが、英語を勉強しているという証明にはなる)だと思っていただければよい。

卒業生の多くはせっかくなのでこの「国際中医師」なるやたら肩書きは格好のいい物を卒業証書代わりにとるというわけである。(まあ私もそのうちの一人であるが(苦笑))

国際中医師が漢方に詳しいとは限らない

ちなみにこの「国際中医師試験」の合格率、ほとんどの学校で95%以上であり、なかには100%のところもある。

では試験はめちゃくちゃ簡単なのか?というとそうではなく、中医学の勉強をしていない者はまず受からないと思ってよい。

上海本校に留学していた時、本科生にテスト問題を見せてもらったことがあるが、難易度自体は本校の問題とほとんど大差ないレベルである。(*本場の中医師国家試験ではなく、定期試験の参考問題集レベル)

ではどうしてそんなに高い合格率なのか?

それはズバリ、「試験問題」と同じ問題の出る問題集があるから

「国際中医師試験」の具体的な中身としては、先ほど紹介した「中医基礎理論」「中医診断学」「中薬学」「方剤学」が各100点、「中医内科」「中医婦人科」「中医小児科」が3科目合わせて100点、これらはマークシート問題である。

あと100点分は弁証論治問題(いわゆる症例問題)の記述式の計600点満点の試験、という風になっており、先の「問題集」は記述以外の計500点分の答えを丸々教えてくれているというわけだ。
※もちろんその問題集自体の問題数は500問ぴったりではなく数千問あるので、どの500問が出るかは不明。

各科目で6割が足切り条件なので記述試験でへまをすると落ちることも考えられるが、問題集をしっかりとやっておけば、もっと言うと全部の問題と回答を暗記しておけばほとんどの人は受かってしまうというわけである。

これが難易度の割に異常に高すぎる合格率の理由である。

なので薬局のホームページで薬剤師紹介の欄に「国際中医師」があるからといって資格がない人よりも必ずしも漢方や中医学に詳しいわけではないということは覚えておいた方が良い。(もちろんメチャクチャ詳しい人もいるので他のホームページの内容なども参考に判断を。逆に言うと「国際中医師」を持っていなくてもメチャクチャ詳しい人は山ほどいる!

どんな資格試験でもそうだが、やはり大切なことは国際中医師試験に受かってからその後どんな勉強をしてきたかである。

上海中医薬大学本校留学(大専班)へ

という風に、大体の方は2年かけて「国際中医師」試験合格を卒業証書として卒業し、おのおの道へ進んでいくわけであるが、実は全課程修了後にもう一つ「暇な物好きのための隠しコース」なるものがある。

それが「上海中医薬大学本校」への留学「大専班」なるものなのだ。

このコースは毎年5人程度集まれば開くことができるのだが、やはり1年間仕事を休んで、しかも中国での生活、ということでなかなか人が集まらない。

私の時はなんとか運良く5人集まったのだが、その次の年は人が集まらず、結局開かれなかったらしい(日中関係も多いに影響するのだが…。)

というわけで次回からはいよいよ「上海中医薬大学本校留学編」をお届けいたします。