不妊症の治療

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不妊症の治療について

不妊症の治療は大きく分けると一般不妊治療体外受精に分けることができます。
違いは一般不妊治療では精子と卵子の受精は体内で起こりますが、体外受精では文字通り体外になります。

一般不妊治療

タイミング療法

タイミング療法は、超音波検査や血液または尿検査などから排卵日を正確に予測し、性交を行い、自然に妊娠する確立をあげる方法です。卵胞は1日に1~2ミリずつ大きくなり、直径18~22ミリ程度になると排卵します。排卵日近くが来たらクリニックで経膣超音波検査で卵胞の大きさを測り、尿中のLH(黄体ホルモン)値をしらべます。通院が難しい場合は尿中のLHを自宅でチェックするキットも薬局などで販売しているので自宅チェックも可能です。排卵日の1~2日前がLHのピークになりますので、陽性反応がでた当日か遅くとも翌日には性交を持つと妊娠の可能性は上がります。

※妊娠しやすさのピークは排卵日当日ではなく排卵日より前になります。大体排卵日の4日ほど前から妊娠の可能性が上がり、排卵2日前~前日が最も妊娠しやすいタイミングになります。また自然周期によるタイミング指導でも妊娠に至らない場合は排卵誘発剤(クロミフェンなど)を併用し、複数の卵子を排卵させることで受精する確立を上げる方法もあります。

タイミング療法では8ヶ月で累積妊娠率が80%以上となりますので、6~8ヶ月を目安にし、それでも妊娠しない場合は次のステップに移ることも考えるほうがいいでしょう。

人工授精(AIH)

人工授精は、精液から運動性のよい元気な精子を集め、カテーテルを用いて子宮腔内に注入し、妊娠にトライする方法です。
人工という言葉に抵抗感を感じる方もおられますが、その後の過程である精子の卵管への侵入、受精、着床などは自然な妊娠と変わらないので、かなり自然妊娠に近い治療法と言えます。適応となるケースは以下の様なケースが考えられます。

  • ①精子の数が少ない:精子濃度1500万以下の場合、精子運動率が40%以下の場合など
  • ②射精障害や性交障害がある:勃起不全、膣狭窄など
  • ③精子と頚管粘液が不適合:頚管粘液の酸性度が高かったり粘稠度が低いなどで精子が子宮に進入するのが妨げられる場合
  • ④原因不明の機能性不妊:検査では特に異常が見られないがなかなか妊娠に至らない場合

人工授精(AIH)の成功率は約10~20%と言われており、人工授精で妊娠する人の80%以上は3回目までの治療で妊娠しており4回目以降は妊娠率の増加がなくなってきます。この場合AIHでは解決できない問題が他にあると考えられるので、次のステップ(体外受精など)に移ることを考える必要があります。

体外受精(IVF-ET)

体外受精(IVF-ET)

体外受精は、妻の卵巣の中から取り出した卵子と、夫の精液から採取した精子を培養液の中で受精させ、一定周期培養した胚を子宮腔内へ戻して着床させる方法です。タイミング法や人工授精などの一般不妊治療と比べて妊娠の成功確率が高まるメリットはありますが、卵子を体外に取り出して行うこの方法には常に安全と倫理の問題が伴っており、十分な配慮の上で行える治療施設を選ぶ必要があります。

主な適応ケース

女性側:高齢の不妊症の方、排卵障害、両側卵管閉塞、子宮内膜症、人工授精からのステップアップ、その他原因不明な場合

男性側:精液所見にかなり問題のある乏精子症、無精子症など

体外受精のメリット

①妊娠率の高さ
一般的にはタイミング療法の8倍、人工授精の4倍程度といわれています。しかしながら成功率は年齢によってかなり差があり、35歳以下なら40%ほどですが、40歳を超えると10%程度に下がります。
②原因不明不妊にも有効な場合がある
原因不明不妊の多くの場合に卵管采が卵子をうまく取り込むことができないピックアップ障害があると言われていますが、体外で精子と卵子を出会わせるためその心配がありません。
③卵の状態を目で確認できる
体外に取り出すことで実際の卵の状態がわかるため、現在の自分の卵の状態を眼で確認することができます。

体外受精のデメリット

①身体的負担
排卵誘発剤によって卵巣が腫れたり腹水が溜まったりする卵巣過剰刺激症候群(OHSS)などが起こることがあります。また通院回数や注射の回数などの増加も負担となります。
②経済的負担
保険適応では無いため全額自己負担となり、施設にもよりますが1回30万~50万円程度の費用がかかります。
※体外受精での不妊治療では助成金の適応もあります。
③生まれた子供の長期予後
世界で初めて体外受精に成功したのが1978年と、まだ年月が浅く、不明な点が多い。現在では先天異常や染色体異常の率は通常妊娠とそれほど変わらないという報告が多いようですが、今後も長期的な調査が必要になる問題です。
また顕微鏡下で卵子に精子1個を極細の針で注入し受精させる“顕微授精(ICSI)”という治療法もあります。体外受精を行ってもうまくいかない場合に用いられる方法です。・精子濃度が非常に低いケース
・精子運動率が非常に低いケース ・精子奇形率が非常に高いケース ・無精子症などが適応となります。精液の中に1個も精子がいなくても、精巣中に精子がいれば、精巣から精子を取り出し、顕微授精をすることもできます。(TESE:精巣内精子抽出法)

不妊治療にかかる費用

不妊症の治療にかかる費用の相場

各治療法によって値段は異なります。また体外受精、顕微授精など保険適応外の部分は治療施設によっても値段が異なることがあるためあくまで参考程度とお考えください。

・初診時の費用(問診、内診、血液検査、超音波検査など)
約4000円~1万円程度
・タイミング法(1周期あたり)
約5000円~1万円程度
・人工授精(1周期あたり)
約1万~3万円程度
・体外受精・顕微授精(1周期あたり)
約30万~50万円 ※顕微授精のほうが体外受精に比べ5~10万円高い医療機関が多いようです。

妊娠できるまでにかかる費用

全国の医療機関の不妊治療により妊娠した26~46歳女性への株式会社パズラボによるインターネット調査(回答数926)によると、
■妊娠までの治療期間は平均25ヶ月
■妊娠までの治療総額は平均140万円
となっています。

助成金について

国や自治体では2004年から体外受精・顕微授精を受けている方を対象に、助成金を受けることのできる「特定不妊治療費助成制度」を設けています。西宮市に関しては当ホームページのブログも参考にしてください。

また自治体によっては県と市町村それぞれから助成金が出る場合もありますので、まずは各自治体に問い合わせてみてください。

以上、不妊症と不妊治療についての現状について簡単に紹介させていただきました。ここでは取り上げられなかった部分もまだたくさんありますが、今後随時ブログのほうで情報発信していきたいと思います。また日頃の注意点などもブログの方で運動、睡眠、食事などそれぞれ紹介しておりますので参考にしてください。