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新型コロナに対する漢方薬の効果は? 〜日中における対応の比較〜

2020-05-12

先日、日本東洋医学会より、新型コロナウイルス感染症やその疑いのある患者に対し、葛根湯などの漢方薬や解熱鎮痛剤などの対処療法が、その後の重症化と関連が有るのか無いのかについて1000例ほどの症例を集め解析する、という発表がなされました。

漢方薬など対症療法の効果は 新型コロナ、症例解析へ―東洋医学会
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020051000137&g=soc

新型コロナウイルスに対する漢方薬に関しての情報がこのように全国版で発表されたのは恐らくはじめてのことではないでしょうか。

今後どのような結果が出るかはわかりませんが、新型コロナに対しても漢方薬で対応できる可能性が示唆されたという点は非常に興味深いところです。

中国における中医学の新型コロナウイルスへの対応

実は我々のような漢方専門家の間ではすでに2月頃から多くの情報が中国から、そして3月ごろからは日本国内からも入ってきていました。

すこしコロナが落ち着いてきた現在でも、ほぼ毎週”zoom”を使って、実際に武漢で新型コロナの患者の治療にあたった中医師との交流会が開かれており、私も可能な限りは参加するようにしています。


王三虎老師との交流会の様子

新型冠状病毒肺炎診療法案(第7版)=”診療指針”

中国においては1月には国家衛生健康委員会から「新型冠状病毒肺炎診療法案」なる”診療指針”が発表され(以下診療指針)、第3版からは中医学(漢方)による治療の方針も示されており、現在は第7版まで改定されています。
(※冠状病毒=コロナウイルスのこと)

第7版の中医学の分野に関しては私の方で翻訳したものもありますので、興味のある方は参考にしてみてください。

新型コロナウイルス肺炎治療ガイドライン(第七版)翻訳(中医学的治療部分)
https://www.irodori-kanpou.com/irodorikanpoublog/20200401/2489/

こちらを読んでいただければわかるように、実際に中国においては軽症、中等度、重症、重篤、そして回復期、これらすべての過程において、西洋医学的治療と漢方薬治療とが並行して行われています(中西医結合)。

中医学(漢方)併用による治療の結果は?

そして中西医結合は、西洋医学単独での治療と比較しても

  • ●病程の短縮(入院期間↓、症状消失までの日数↓、CT検査の好転率↑)
  • ●重篤化率の低下
  • ●ウイルス検査の陰性率の上昇
  • ●臨床治癒率の上昇

など、実際に効果が期待される結果も多数報告されています。

サイトカインストームにも漢方薬が使用されている

また最近テレビでもよく聞くようになったサイトカインストームについても、中国では「血必浄(けつひつじょう)」という漢方の注射剤を使って対応していて、実際に重症者の治癒率、死亡率の改善に役立っているとのことです。

残念ながら漢方の注射剤は日本では認められていないため、現時点では使用はまず不可能です。

日本における新型コロナに対する漢方治療の考え方

一方、日本では3月19日に、先の中国における「診療指針」の第7版を基に、金沢大学の小川恵子Drより医療用漢方エキス製剤(保険適用の漢方エキス剤)による「COVID-19感染症に対する漢方治療の考え方(特別寄稿)」が発表されました。

COVID-19感染症に対する漢方治療の考え方(特別寄稿)
http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/news/gakkai/covid19_kanpou_0319.pdf

こちらに関しては、医療用漢方エキス剤のみで示されているため、普段保険漢方エキス剤のみで診療を行っている医師にとっては、実際に患者を目の前にした際にどんな漢方薬を選択したらいいのかを考えるにはとても使いやすい指針となっているのではないでしょうか。

医療用エキス剤がすべての漢方薬とは限らない

しかしながら、我々のような漢方薬局ではこちらの論文を参考にしている方はそこまで多くないかもしれません。

なぜなら、保険適応の枠にさえ縛られず、自費の漢方も含めて考えた場合、より適した方剤や単味エキス剤(藿香正気散、銀翹散製剤、温胆湯、玉屏風散、馬鞭草製剤、大青葉エキス、板藍根エキスなど)がいくらでもあるからです。

先の論文は、表題の通り、あくまで”医療用漢方エキス剤”という限られた枠における指針、と捉えたほうがいいでしょう。

「煎じ薬」が処方できる医師であれば中国と同等の対応も可能!?

もし保険診療で本格的に新型コロナに対応する場合は、やはり中国と同様に「煎じ薬」で対応するほうが適切かと考えます。

その際に起きる問題点として、”診療指針”で使用されている生薬の中にはいくつか保険適応外の生薬があり、同じ処方が作れない可能性があります。

しかしながら、病機(病気の発生メカニズム)をしっかりと把握することができるDrであれば、それも対した問題ではありません。

王三虎老師も同様の質問に答えられていましたが、保険適応でない生薬の場合も、同じ効果の有る生薬(帰経、味など)を熟知していれば他の生薬で代行ができます。

よって先の問題点もしっかりと中医学・漢方について学ばれている先生であれば十分に対応は可能かともいます。

日本でも生薬の煎じ薬で対応している先生も少数ながら実際におられますので、そのような本気で漢方をされている先生を探してみてもいいかもしれませんね。

まとめ

以上、マスコミからの新型コロナに関する漢方薬についての発表を受けて、日本と中国における漢方および中医学の状況を比較してみました。

感染拡大初期から積極的に介入した中医学とは異なり、日本における漢方の役割は残念ながらまだまだ中医学と比較できる段階にもなっていません

ただ、今回の発表でもし何らかの肯定的な結果が示された場合、ひょっとしたら新型コロナ治療における漢方薬の認知も少しは広がる可能性は残されています。

今後どのような結果がでるのかはまだわかりませんが、経過を注意深く見守っていきたいと思います。

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