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帯状疱疹に対する漢方治療その② 〜朱仁康臨床経験集より〜
少し時間が空いてしまいましたが、今回のブログも「帯状疱疹に対する漢方治療その②」を紹介したいと思います。
使用している生薬を見ると、前回の症例と似たところもありますが、異なっている部分ももちろんあります。
解説の方ではその違いについても考察を加えているので、よろしければ是非参考にしてみてください。
前回のブログはこちら↓↓
https://www.irodori-kanpou.com/irodorikanpoublog/20190905/2280/
60歳男性の帯状疱疹治療例
●初診:1973年1月28日
【主訴】:右まぶた付近に出現した疱疹痛が三日間続いている。
【現病歴】:三日前、突然右側の下瞼付近に疱疹ができた。疱疹は紅く痛みをともなって腫れ、右目からは涙が出て、さらに黄色い目脂(めやに)も出ている。併せて右側に偏頭痛があって寝たり座ったり安静にできない。大便は乾燥、のどが乾き冷たい飲み物が飲みたい。
【検査】:右側顔面、瞼付近に米粒大小の紅い疱疹が集まっている、額の右上のほうにも疱疹がある。触れると痛みは激しく、右の上下の瞼は玉の如く紅く腫れ、眼は開けられない状態で、涙が流れ、黄色い目脂(めやに)が出ている。脈弦、舌紅、苔黄燥。
【中医診断】:蛇丹
【西医診断】:帯状疱疹(三叉神経Ⅰ〜Ⅱ支)
【証属】:胆経湿熱内盛、火毒上熾。
【治則】:清化湿熱、通腑瀉火。
【薬用】:馬尾連9 黄芩9 大青葉15 牡丹皮9 赤芍9 金銀花9 馬歯莧60 蒲公英15 生甘草6 大黄6(後下)
(外用)玉露膏
●二診:2月1日、3日分服用後に再診、疱疹は已に乾燥してかさぶたとなっており、眼の腫れも消えている。眼も開くことができるようになり、視力も通常になった。また痛みもかなり軽減された。腑熱は已になくなり、舌苔薄黄、脈細弦となっている。前方から大黄を去り天花粉6を加えたものをさらに三剤服用後完治した。
彩り漢方薬局による考察
【部位は足少陽胆経】
今回の症例は、発生部位(右側顔面、瞼付近、また右偏頭痛を伴う)から「足少陽胆経」に関連する疾患であることが推測できる。
足少陽胆経は目尻から起こり側頭部を巡っている。
【邪は湿熱(熱>湿)】
紅く腫れ痛み、黄色い目脂(めやに)、米粒大小の紅い疱疹という症状から「邪」は前回の症例同様湿熱と考えて問題は無い。
ただ今回の症例の場合は舌苔が黄膩ではなく黄燥、大便乾燥、咽が乾き冷たい飲み物が飲みたいというところから、湿邪と比較すると熱邪の方が強いことが推測される(火毒上熾)ため、より清熱解毒に重きを置いた治療方針となったと考えられる。
【処方解説】
方剤を大まかに分類すると
- ●清熱瀉火(燥湿):馬尾連 黄芩 大黄 天花粉
- ●清熱解毒:大青葉 金銀花 馬歯莧 蒲公英 生甘草
- ●清熱涼血:牡丹皮 赤芍
のように分類できるが、このうち(馬歯莧60 蒲公英15 大青葉15)は朱老医が帯状疱疹における清熱解毒剤として固定処方とされている方剤で、1971年から1975年までの144例の患者に投与したところ、約87%の125例は平均治癒期間が5.3日という非常に短い期間で治癒し、残りの19名も10日以上かかったが全員が治癒したという報告がある。
残念ながらこれらの生薬をすべて含んだエキス製品は日本では存在しないので、エキス剤での代用は厳しい。
また馬歯莧60gなど、使用量はかなり多くなっているのでその辺は実際には調整が必要である。
ただそれぞれの薬草(馬歯莧・蒲公英・大青葉)は漢方薬局であれば食品として購入可能で、馬歯莧はスベリヒユ、蒲公英は蒲公英根として売られている。
ほかに見慣れない生薬として馬尾連という生薬がでているが、同じキンポウゲ科の黄連で代用が可能である。
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